文庫本 スクリーンの向こうから、誰かが見ている 映画館の灯りが落ちる瞬間、世界はふたつに分かれる。 それでも、映画を観ていると、ふいにその境界が曖昧になる瞬間がある。 スクリーンの中に幽霊が出る映画は多い。 たとえば『ゴースト/ニューヨークの幻』。 あるいは『黄泉がえり』や『シックス・センス』のように、 映画館を出て、外の光に目を細めるとき、 この本では、そんな“スクリーンの幽霊たち”を辿ってみたい。 暗闇のなかで見た夢の続きを、
こちら側には、まだ息づく者たち。
そして、スクリーンの向こうには、もうこの世にいない者たち。
亡くなったはずの俳優が、笑い、泣き、恋をする。
一九六〇年代の街角を、かつての名優が歩いていく。
私たちは暗闇の中で、その姿に手を伸ばしたくなる。
けれど、よく考えると──映画というもの自体が、もともと“ゴーストの器”なのかもしれない。
映写機が回るたび、光と影の粒が、過去の時間をよみがえらせる。
亡き人たちの声が、フィルムを透して再び響く。
それは、科学でも霊術でもなく、映画という芸術の奇跡である。
愛する人に触れられぬまま、なお傍らにとどまる男の魂。
あの陶器を形づくる手の重なりを思い出すたび、観る者の誰もが知る。
“別れ”の物語は、同時に“つながり”の物語でもあるということを。
死者が語り残した言葉を拾いあげる映画もある。
そこには恐怖よりも、赦しと再会の匂いが漂う。
死者とは、私たちの心の奥で沈黙しているもう一人の自分なのだ。
どこかにその“誰か”の気配が残っている気がする。
観客の涙と笑いの中に、スクリーンを漂う幽霊たちは棲みついている。
彼らは私たちが忘れた記憶を、もう一度見せてくれる。
彼らが何を伝え、なぜ還ってきたのか。
そして、映画という光のなかで、
私たちはどんなふうに「死」と「生」を見つめてきたのか。
もう一度、静かに語ってみようと思う。
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