田村誠一、三十八歳。大手法律事務所で「完璧主義者」と呼ばれる弁護士。
勝訴率は事務所トップ。クライアントからの信頼も厚い。
傍目には、何不自由ない人生だった。
しかし、家庭には別の顔があった。
「あなたの稼ぎが少ないから、私が惨めな思いをしている」
「私がイライラするのは、全部あなたのせい」
妻からの言葉の数々。
誠一はいつしか、自分の意思で何かを決めることを忘れていた。
ある夜、偶然立ち寄った古書店で、誠一は一冊の手帳を手にする。
「背徳シールド」
店主の老人は言った。
「完璧な人間が、少しだけ悪になるための道具です」
手帳を開くたび、不思議と罪悪感が消えていく。
そして誠一は、少しずつ変わり始める——
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本書には、誠一の物語に続いて、妻・圭子の視点から描いた続編「鏡の中の母」を収録。
同じ出来事でも、立つ場所が変われば、見える輪郭は変わる。
同じ部屋にいたのに、二人は別の景色を見ていた。
誰が正しいかを決めるためではなく、
二人のあいだで何が起きていたのかを、もう一度見直すために。
完璧でなくていい。
時には、誰かを失望させてもいい。
あなたは、不完全なままで、生きる価値がある。
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