私がレナード バーンスタインという人物を語るとき、いつも少し背筋が伸びるのだよ。 それは彼が偉大だからという単純な理由ではなくて、彼の存在そのものが、音楽の世界を一段階も二段階も押し広げたように感じるからだ。 けれど、君も知っているように、偉人というのは往々にして「完成された天才」として語られがちだ。 バーンスタインも例外ではない。 だが実際の彼は、もっと人間らしく、もっと矛盾だらけで、もっと魅力的な存在だった。 彼の音楽には、爆発しそうな情熱と、静かな孤独が同居している。 舞台の上では嵐のようにタクトを振り、家では作曲机の前で一音に悩み続ける。 教育番組では子どもたちの前でにこやかに語りながら、その裏では社会問題に真っ向から意見する覚悟もあった。 まったく忙しい人だ。 私なら三日で心が折れる。 だがバーンスタインは、その全部を抱え込んだまま、駆け抜けていった。 指揮者として、作曲家として、教師として、そして一人の市民として。 彼の人生を調べていくと、彼がつねに「音楽とは何か」「芸術とは誰のためにあるのか」を問い続けていたことがわかる。 その問いは現代の私たちにも突き刺さる。 いやむしろ、情報に押し流され、心が渇きやすい今の時代だからこそ、より深く響くのかもしれない。 もちろん、本書では偉そうな講義などしない。 君と私が並んでひとつのステージ袖からバーンスタインの人生を覗き込むように、彼の息づかいや悩み、笑い、そして輝きを追いかけてみたいのだ。 途中で私が脱線する可能性は……うん、正直に言えば高い。 彼の人生にはあちこちに面白い落とし穴が掘ってあるからね。 でも安心してほしい。君の袖をそっと引っ張りながら、最後には必ず本筋へ戻るつもりだ。 さて、音楽で世界を抱きしめた男。 その鼓動を聴きにいこう。
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