「敵のいない決勝戦、しかし観客席では静かに次の戦争が始まっていた」
1820年。
アメリカは独立戦争世代が舞台を去り、建国の熱狂も冷めかけた時代であります。
現職大統領ジェームズ・モンローに、まともに挑む対抗馬は存在しません。
かつての宿敵、連邦党はすでに全国政党としての体力を失っていました。
つまり今回は、候補者同士の殴り合いという意味では、驚くほど静かな試合なのです。
しかし、スタジアムの照明の外側では、まったく別の巨大な対立が育っていました。
奴隷制を西部へ広げるのか、広げないのか。
この一点をめぐって、連邦そのものが分裂しかねないほどの緊張が走っていたのです。
さらに、選挙の前年にはアメリカ史上初めての本格的な金融恐慌が国土を襲い、多くの家庭が土地と職を失っていました。
つまり今回のヒストリースタジアムは、リングの上は静かで、リングの外が異常に騒がしいという、非常に特殊な一戦なのです。
さあ、歴史を決める一票の戦いが始まります。
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